第二回 黒談春
昼は横浜にいて、夜は新宿まで戻ってきて第二回黒談春を見てきました。前回は謎の前座君が出てきましたが、今回は何が出るのでしょう。
幕が上がるとすぐに、三人の弟子が大きな缶を転がしてきました。三人目のメガネの男性はまたまた来た新弟子のようです。またしても線の細そうなメガネ君でした。談春師匠もびびるような巨漢とかやくざとかはなぜ来ないのでしょうか?相手を見る力がある人は来ないんですか?自分に無いものを求めるのでしょうか?
その間から、もそもそ出てきたのはホルスタインではなく ダルメシアンの着ぐるみをつけた談春師匠でした。犬のコロ談春だそうです。誰かに愚痴りたくなったら出てくるそうです。何の愚痴かというと、坊主の元一番弟子で今二番弟子の何とかさんという人のことです。あまりに気が利かないので「このまんまじゃ首だぞ?分かってるか?」という質問に次々と珍回答を繰り出す弟子。クビになったら最果てに行くというので、どこだ最果ては?という質問に「択捉島です。」しかも青函連絡船に乗っていくとのこと。今は青函連絡船は無いんだという師匠の答えに驚愕する弟子。何とか春という字がついた名前を戴きたいのでございますというので、師匠が「春春」ってのはどうだといえば、「ひねりが無いのでございます。」 談春師匠に、ひねりが無いって言ってみたい!気が利かないというのは談春師匠にとってはいらいらするのでございましょうが、師匠の兄妹弟子野中では世間では鈍感といわれていても落語がとても素晴らしければ落語家的にはOK な方が大勢いらっしゃいます。客へのネタにもなることだし、もう少しおそばに置かれてはいかが?また出てきて良いですか?という伏せ目がちなコロ談春に、客席は暖かい拍手で快諾したのでした。
コロ談春が自ら缶からを引きずって去った後、黒紋付の師匠が普段より少しだけ気取って出てきました。先ほどの犬とは別人だぞ!というアピールでしょう。まくらを振らず花見の敵討ちへ。ほとんど聴いた事がないと記憶しているので、これもほぼネタおろしのようなもの?長屋の若い衆が集まって趣向を考えた。花見でにぎわう飛鳥山で巡礼兄弟と、その仇の浪人が大立ち周りをするという芝居を打つ。そこに「暫く!」割って入る六十六部役とともになぜか皆で踊りくるって花見客を驚かせようという壮大ながらあほらしい計略。しかし六部は現れず、巡礼兄弟は本物の侍に本当の敵討ちと勘違いされいらない助太刀を呼んでしまう。本当の侍が出て来たら皆斬られてしまうというので敵を討つほうと討たれるほうが一緒に逃げ出して・・・。この噺は結構盛り上がるけれどオチがつまらない。鰍沢よりつまらない。なので春師匠には是非より面白いオチを考えてもらいたいです。この噺は登場人物の会話のテンポがスピーディなほうが楽しくなりそうなんですが、春師匠はそろりそろり丁寧に演じていたので躍動感という点では少し重い気がしました。春さんの落語は言葉をつないで形作るという傾向があると思いますが、この噺ではぽんぽん場面が変わっていくほうが私には面白いかなーと思いました。
中入後 こちらこそネタおろし、百年目です。若いもんには出来ない噺の代表のような噺です。お店の中と外で違う顔を持つ番頭と、それの真実を知ったお店の大旦那の関係がとても難しいというか、見ごたえのある噺です。もちろん米朝師匠のが今現在では最高峰でしょう。無くなったところでは円生師匠のが有名です。私なんかは百年目を見る時、番頭を円生、旦那は米朝の顔が自然に思い浮かんでしまいます。
冒頭の奉公人を次々小言攻撃していく場面は想像通りの居心地の悪さ。ああ、私がこの店に奉公していたらのべつ言われてしまうだろう、ここにだけは奉公したくないと思いました。あそこは談春師匠にはお手のものでしょう。しかし、それがお店を出て花見に出かけるあたりに面白みが無い。ジギルとハイドほど変われとは言いませんが、もうちょっと陽気にどんちゃんした方がその後の悲劇のコントラストが面白い気がしました。次に、旦那にばれてお店の二階でクビ宣告に怯える場面では、番頭の独白する台詞の内容は面白いですがもうちょっとコミカルさがほしいです。本人はそれどころじゃないんですが、おろおろする様は傍から見ると面白いものなのです。そしてこの噺の肝、大旦那様が番頭に話をする場面、今思うとやっぱりと思いますが言葉が多い。大旦那と番頭という長い付き合いの間柄なんだから、多くを語らずとも分かるだろうと思うのですがどうなのだろうか?旦那という言葉のいわれと、番頭も子供のころは意外にも出来の悪い子供だったというエピソードでなんとなく感じると思うんだけど。そこは大旦那の上品さで必要なことだけさりげなく言ってくれたほうがぐっと来るなー。
後ひとつ、どうしても黒と白を厳密に分ける意味が分からない。黒もあって白もあるまだら模様のほうが客にとっては美味しい気がするけどなー。
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