« 立川談笑独演会 国立演芸場 | トップページ | 姉様キングス「桂あやめ・林家染雀二人会」 »

第三回黒談春

昨日は紀ノ国屋ホールへ立川談春師を見に行きました。
ちょっと早かったので、ホール脇の展示室でやっていた「上方落語展」を見ました。
ワッハ上方が所蔵する古い落語会のチラシやポスター、初代春団治の羽織やらを展示していました。
若き談志師匠(鬼才!ともう呼ばれている)の上方独演会は夜八時会場だったとか
その昔桂米朝師匠が6日連続独演会を開いたときのチラシには、前座に桂吉朝、月亭可朝、桂枝雀があがるという
もう夢のような六日間が刻まれていました。。傍らのテレビには、在りし日の吉朝師匠の蛸芝居が流れついつい引き込まれてしまいました。

 

さて、今日のご趣向は初回に登場したメガネで小太りの謎の前座がまた登場しました。名前は「春作」というそうです。
「昇太師匠に教わった「力士の春」をやります。」弟子入り半年で師匠の口調をすっかり会得した天才前座君です?
まずオーソドックスな力士の春を途中はしょりつつ一席。息子を将来横綱にしたい母親が「立派な横綱にならなきゃだめなのよー!」と親指と人差し指で「L」 の字(ルイルイって、わかるかな)を作りつきだすしぐさが、昇太師匠譲りを示していましたが、突き出す角度が違うのであんまり似ていないのでした。
 「力士の春」が終わるとめがねをはずし「この話をやるときにはメガネをはずせと師匠に言われました」次は力士の春のパロディ「噺家の春」です。ここから 先は談春師作だからメガネを外すのですね。これはどうしても息子を落語家にしたい両親に育てられた少年の話。談志ファンの母親と志ん朝ファンの父親の間に 生まれた「松岡美濃部克由」略して「みのかつ」は学校から帰るなり、羊羹を食べるしぐさの稽古をさせられ、おつな「清酒べけんや」を飲んで舌鼓を打つ稽古 をさせられ、「ポンポン!」と小気味いい手の打ち方の稽古もさせられ、末広亭深夜寄席にいかされる。やはりあの手の打ち方にはこだわりがあったのですね。確かにうまく響くと落語の質が上がる気がします。
 嫌がる子供もいつの間にかすっかり子供噺家になり、クラス内はまるで寄席のようになってしまいます。生徒は手ぬ ぐいを交換しながら「今年もよろしく」なんてやってる。先生は「何で教室の真ん中に火鉢が置かれてるんだ!」「羽織をランドセルから出して着るなー!」つ いでに「堀井!見すぎだ!ありがたいけど」(笑)と怒りっぱなし。みのかつに作文を読ませようと教壇に呼ぶとクラスメートの青木が「本日の前座を務めさせ ていただきます」と着物を着て教壇に座蒲団とお茶を置いたりする。トリを勤めるみのかつが高座(教壇)に上がって「お後を楽しみに一席お付き合いくださ い。」先生がすかさず「何でトリなのにお後を楽しみになんだ!先生は好きでもないのに詳しくなっちゃったじゃないか!」(笑)
 そんなこんなで大きくなり、てっきり立川流か落語協会の古今亭に入門すると思いきや、なんと円楽党に入るという。どうして棘の道を選ぶのかと泣く両親を説き伏せ王楽に弟子入りし3ヶ月、とうとう名前をもらえるという時噺家を辞めると言い出す。
母親が「どうしてやめるの?今落語界は大御所の立川談志や柳家小三治、あとは・・・思いつかないから若手に行くわよ!志の輔に昇太に市馬、三三、談春、志 らく、談笑、たい平、その他SWA!みんなキャラがかぶってないのよ!落語界はあと20年は持つのよ!何でやめるの?!」
「だけど、その中に円楽党は一人もいない(泣)」
「だから棘の道だって言ったじゃない!」(笑)
しかし、三遊亭こそ落語の本流、三代目三遊亭円朝を目指ざせと説得され、末には三遊亭白鳥としのぎを削り見事円朝になりましたとさ。

 2月にあった昇太トリビュートのときより内容がちょっとソフトになってたのが残念ですがまた聞けてよかった。次は墨染めのよう麻の縮を着た談春師匠の登場。今回のネタおろし、「質屋蔵」をなぜやるの等々がまくら。
昔仁鶴師匠がものすごい引いた演技でやったのお見て驚愕し、その後好対照 の米朝師匠のを見て面白いからやってみようと思ったけれど、東京の人がどんな風にやるのか見たらやりたくなくなっちゃった。今回もやめようと思ったけど周 りに説得されて昨日4時間ぐらいで覚えたそうで、ただやるだけやります。また何年か後で変わるかもしれないし。
 始めたら言った通り面白くなさそうな雰囲気。質屋の主人が語るエピソードである、貧乏長屋のお上さんが必死な思いで帯を買い、せっかく買った帯を質に入 れなくちゃいけなくなり、それを受けだせないま死んでいく話がたるいたるい。質屋に来るものにはどれも人の重い念がこもってると言いたいのでありますが、 まるで「たちきり?」ばりに人情話みたいなトーンで語るので、落ちを知っている身としては辛すぎる。
 最後蔵の中にある掛け軸の菅原道真が「藤原にわらわを請け出すように言ってくれ。また流されそうだ」という、この一言が面白いからやるだけの落語なの に、掛け軸が出るまでが重過ぎる。東京の人が本当にこんな風にやっているのなら、やりたくなくなっちゃうね確かに。しかし、談春師匠はなぜこんな重たい トーンでやったのだろうか?談春師の考えが分からん。ちなみに志らく師匠の質屋蔵は帯の話しをしつつも、蔵の中のお化けにおっかなびっくり会いに行くとこ ろに重点を置き、道真公の登場ではまるで映画のスクリーンから抜け出てくるような演出で笑いを生んでいました。

 中入り後次は細かい格子柄の織りの薄物で再登場。「今日は録音している人がいるんですって。止めてくださいねー。優しく言っているうちに止めろよ!」ら くだの丁目の半次ばりに目の色が一瞬変わって恐ろしい。最前列で見ちゃった。この目でにらまれ稽古をつけられるこはるちゃんは鍛えられるね。
 トリの一席は「豊志賀」。何年か前ブディストホールで見たっきりです。あの時は、ほとんど地噺で落語というより談春師の豊志賀論を聞いたという印象でしたが、今回はどうなるのでしょう。
 39歳の富本(また知らない芸能!)の師匠豊志賀と21歳の若者新吉の、因果が絡む恋愛・怪談話ですが、長い因果を語ると説明だけで今日が終わっちゃう ので、あくまで豊志賀の年齢差による恋の終りに対する焦り、恐れ、恋人への執着をあぶりだす演出にしありました。女性の語り口が抜群にうまい談春師ですか ら、「新さん、お前さんはいつか私を捨てるんだろうねぇ・・・」という言葉が真に迫り悲しく怖くなります。自分の心の妄執ゆえに、かえって恋しい男に捨て られることになる愚かで哀れな女が座蒲団の上にゆらり座ってるように見えました。
 「豊志賀」の話の前には、新吉の父親が豊志賀の父親を殺しているという因縁話があり、殺された父の怨念が豊志賀の心に暗い影を落としていたがゆえに、暗 い情念を持ちやすい女になったのかもしれません。しかし、談春師はその死人の怨念の要素を話に反映させていないので、円朝が好む「因縁」を深く感じること は出来ませんでした。最後豊志賀が遺書を残します。円朝では「7人までもとり殺す」と恐ろしい文句で、この先続く因縁を思い浮かばせますが、それを談春師 は「呪」の一文字で表現し、深い怨念よりも、女の悲しい心を強調したいようです。円朝作品のどこまでも続く人間の暗い因縁が見たい私としてはあれですが、 談春師の巧みな演技に消え入りそうに揺らめく豊志賀を幻視できたので、それはとてもすばらしいことだと感動しました。

 立川春作 「力士の春」「噺家の春」

 立川談春 「質屋蔵」

 仲入り

 立川談春 「豊志賀」

 この豊志賀の高座の中で、途中、女の嫉妬より、男が男にする嫉妬のほうが怖いという話を師匠が挿入したのですが、それがめっぽう面白かった。この会でこれが一番面白かったんじゃないだろうか。面白すぎて豊志賀の落語が壊れそうだった。

どうも談春師に迷惑がかかるんじゃないかと思い、詳しくは公表しないことにしました。どうしても知りたい方は、どこかの会場で声をかけてください。苦笑

登場人物だけ。

「エンタクシーで嘘ばっかり?騒動」で匿名で喋ることを覚えた談春師。

談春師のライバルSらく、S太

大物落語家 D志

聡明なセーラー服の女子高生A

 

|

« 立川談笑独演会 国立演芸場 | トップページ | 姉様キングス「桂あやめ・林家染雀二人会」 »

立川談春」カテゴリの記事

コメント


最近すっかり落語を聴くことを忘れていました

談春さんのお弟子さん春作さん、みたいなあ・・

ジュン様

>談春にめがねをかけると春作になります。別キャラになることによって己の一部分を開放してるんでんだろうか。

投稿: ジュン | 2007年8月 1日 (水) 22時45分

>ジュン様

黒談春はとりあえず今年は終わりみたいです。
気まぐれな師匠なので来年またあるか分かりませんが
どこかでまた春作君に出会えるといいですねー。

シャオセン様

それは存じませんでした

久々に、落語に触れようと、落語のcdの販売を主とする、紀伊国屋の2Fのテイト無線でバイトしようかと思ってましたが、今の仕事のほうが金がよいのでやめました。
いつか、黒談春、見に行きたいです。。。

投稿: ジュン | 2007年8月 2日 (木) 23時31分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/161937/7370859

この記事へのトラックバック一覧です: 第三回黒談春:

» 黒談春 第三回 [らくごのパッチBLOG]
黒談春 第三回 2007年7月31日(火)会場:紀伊国屋ホール なんだかんだ言っ... [続きを読む]

受信: 2007年8月11日 (土) 15時17分

« 立川談笑独演会 国立演芸場 | トップページ | 姉様キングス「桂あやめ・林家染雀二人会」 »