ミックス寄席 市馬VS談春 風の盆
昨日は国立演芸場へ行ってきました。最近柳家へ本家帰りをしている談春師と柳家の極めつけ市馬師の二人会です。前回は二人が顔を合わせ楽しかったけれど落語的にはぐだぐだだったので、今回はどうなるのか注目です。
二人が顔を合わせると落語が長くなると予想されたのか、6時35分には前座の柳亭市朗さんが上がりました。「たらちね」をやりました。大家さんが八五郎の家へお嫁さんを連れてきて、家の敷居もまたがずさっさと帰っちゃったのが笑えました。やってる本人はあまり考えてなかったと思いますが。今回も、とても手の所作が雑で汚いのが気になりました。最近の前座さんは、落語が好きでやってるのかはなはだ疑問です。好きならもっと真似したいって気になるはずなんだけどなぁ。目先の笑いをとろうと、口ばかりが動いている気がします。落語が下手だといっているのでなくて、下手は下手なりに落語への愛がほしい。落語家としての形がとてもきれいな師匠に付いているのにもったいない限りです。
今回の先攻は市馬師から。あの機嫌良い出を見ると心がとても晴れやかになります。
自分の間延びした顔に比べると、談春師はまとまってるけど、歌では負けないぞなんて軽く客をほぐしてから夏の噺の代表作「青菜」を実にさわやかに。氷の上に敷かれた鯉の洗いを「アザラシが寝転んでるよう」と、なんでもないようなくすぐりがとてもおかしい。市馬師の見立ては嫌味がなくて面白いのが値打ちですね。青菜は食らうてしまって無いのを、「その名(菜)を九郎(食らう)判官」と隠し言葉で話すという上品な形にほれ込んでしまった植木屋が「いいねぇ、いい形だねぇ!こういうことはすぐ真似しなきゃ」と、さもうれしそうにうきうき家に帰る様は、歌に惚れ込んですぐ唄っちゃう市馬師そのものとダブって、こちらもうきうきします。
後攻は、これも好きな人と出れる喜びでニコニコしている談春師。何時になくゆったりとした挨拶で「付き合っている人が良いと挨拶も鷹揚になる」だそうで。 まくらはこのぐらいですぐさま落語へ。おお、「へっつい幽霊」です。ここで聴けるとはありがたい。大体は談師師匠のスタイルを踏襲しながらも、市馬師匠の影響か登場人物の性格が談師師匠のそれよりだいぶに穏やかのように感じました。 冒頭、へっついの説明に入る前に林家きくおがへっついを「よーするに昔のガスコンロ」と言った話を挿入。へっついが分からない人は、下町風俗資料館で見てみてください。終盤、へっついに取り付いている幽霊とサイコロ博打を打つシーンでは、賽をガランポン振った後の談春師がすっとポーカーフェイスの表情になり、ついついこういうシーンではリアルになっちゃうのねととてもおかしかったです。
仲入り後またまた談春師の登場。トリは先輩の市馬師に譲っているということです。まくらなしにすっと入ったのは「慶安太平記」でした。確かにまくらなんかしゃべってる時間はありませんね。かけ始めた時期に比べて、だいぶ余裕が出てきたのでしょうか、たっぷりとした語り口で堂々たる高座でした。しかし、たっぷりさが登場人物の徳川家に恨みを持つぎらぎらした感じを多少薄めてしまったようにも見えました。が、談春師の語り口のうまさ、切れのよさを十分堪能できて素晴らしかったです。
トリの市馬師匠、談師譲りの慶安太平記を聴いてうれしかったらしく、そちら(客席)に回って聴きたかったと言う話から、談志師匠がまだ落語協会にいたときの思い出話を。
市馬師匠がまだ前座だった時の池袋演芸場でのトリの予定は談師師匠だった。でも、高座をぬく(来ない)や、遅れるとなんてのは日常茶飯事なので、前に上がる色物の先生はいくらでも長く出来るアダチ龍光や、先代の林家正楽と決まっていた。そのときも正楽先生が紙をたくさん持って紙切りをするもやっぱり来ない。紙切りだけじゃもたなくて、とうとう正楽先生が落語をやってもまだ来ない。そのとき楽屋に電話があって「俺だ。今日は行かねぇ。ガチャ」そうなると楽屋にいた左談次師匠が鉦をチンチン鳴らしながら高座に登場して「今日は談師師匠は来ませーん」すると客は手を叩いて喜んだと言う。
寄席に来なくても客が喜んでしまう談志師匠は、好き嫌いはありますが現代の名人の筆頭でありましょうといういう話から江戸時代の名人の代名詞左甚五郎「竹の水仙」へ。喬太郎師がたびたびかけて有名ですが、市馬師のも、全編明るい市馬色に溢れた楽しい話になっていました。馬に乗って山道を行く甚五郎が機嫌よろしく歌を歌いますが、その点に突き抜けようと言う歌声が響くと、目の前になんとものどかな田舎道が広がるようでした。イヤー、この歌声で勝負は決まったも同然。旅籠に泊まっても芸者を呼んで実に陽気。「このシーンは必要あるのかなー。」と言いつつも実に嬉しそうなのが良い。
宿屋の主人と文無しの甚五郎とのやり取り、竹の水仙を買いにくる侍のあわてぶりなどが心地よく、ある田舎の素敵なエピソードでございました。喬太郎師の甚五郎は、文無しと言えど、どこか大物の雰囲気を醸し出しているけれど、市馬師のはひょうひょうとした好々爺なんですな。
二人ともとても充実した高座で、見ごたえのあった一日でした。談春師は談志トリビュートって感じ?
開口一番 柳亭市朗 「たらちね」
柳亭市馬 「青菜」
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