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多古久へ行ってきた

 

志ん生ファン、落語ファンにはおなじみでありましょう、湯島の多古久というおでん屋さんへ行って来ました。

 最近お知り合いになった落語ファンのおじ様二人と計三人で訪問。おでん屋というかあっさりとした小体の小料理屋さんのような風情で入りやすかった。ぜんぜん主張しない佇まいが志ん生好みなのかなとなんとなく思った。

 

さりげなく志ん生、文楽、一龍斎貞丈のスリーショット写真が飾ってあったので、それを眺めながらテーブル席へ。本当はカウンターがよかったんだけど、どうせマニアチックな落語ばなしばかりになるので隔離されたほうがいいだろう。

  私ともう一人のおじ様はお酒が飲めない。だからこういうまずは一杯という店にはなかなか入れないのだが、ここは大人の世界だから明烏の若旦那のごとく、最 初の一杯ぐらいは口にしないと場がしらけちゃう。のでビールを。飲めないおじ様はまったく受け付けないらしくウーロン茶。中ビンしかないので、いける口ら しいもう一人のおじ様がビールに付き合ってくれてまずは乾杯。そしておでんへ。

 おでんは銘々の小さい土鍋に、それぞれ食べたいものをよ そってくれると言う。こんにゃく、さつまあげ、すじ、豆腐を頼む。頼むと同時に、まずお通しになるのだろう、奴豆腐が沈んでいる澄まし汁が出てきた。これ がおいしい!出しは鶏肉とかつおだろうか?とても深みがあるのにさっぱりした実にけっこうな出汁なのだ。今思えばお代わりをもらえばよかった・・・。
そ の後すぐに「黒い、あーたは黒いねぇ~」子ほめの台詞そのまんまのという黒く煮えたおでんが出てきた。後で調べると、かつお出汁に煮きり醤油に素材から出 る煮汁だけで煮込まれているそうで、醤油の塩辛さが強い。これはお酒が進むことでしょう。ついついビールに口を付けてしまう。これが東京のおでんの味だと いう。醤油中心味なところはまさにそうだろう。おでんというものを外であまり食べなかったので新鮮だった。セブンイレブンのおでんは完全に関西風なのか。 すじを勝手に牛すじだと思い込んでいたところ、出てきたのは魚風味がする太い白い練り物だった。ねっとっとした舌触りの中に何かしゃきしゃきしたものが練 りこんであった。これも今調べて分かったのだけれど、白身魚のすり身に軟骨を仕込んでゆでたものなんだそうだ。これが関東で言うところのすじで、牛すじは 関西のネタなんだそうだ。ああ、まだまだ知らないことだらけだ。

 三人で話すことといえばもちろん落語のこと。私と他の二人とは世代の ギャップがあるし、好きな落語家も、見に行く回数もまるで違うので話が合うかなと思ったけれど、普段出来ない話ができるというだけで盛り上がるもので、だ いぶ多岐にわたって話が出来た。もちろんこの店の常連だった志ん生のことも。私たちがそういう話をしていたので、お店の人がさりげなく志ん生特集を掲載し ていたサライを見せてくれた。主に志ん生、馬生が寄席がはねた後ふらっと寄っていたらしく、その縁で今でも池上志乃、中尾彬夫妻もよく来るという。中尾彬 は先週も来たそうだ。中尾夫妻の仲人はじつはここのおでん屋のご主人だったという楽しいエピソードもうかがった。我々の向かいに座っているカウンター客は 志ん朝の死は早すぎた、昔を知っている話かはもう談志だけになっちゃったのに今は談志も元気がないという話をしていた。
 この店にいると、皆昔の自分が好きだった落語時代の話をしたくなるようです。

  気づくと三時間近くここで落語の話ばかりしてしまっていた。しかし、こんなお恥ずかしい我々に気さくに接してくれ、そしてほって置いてくれた店の人たちの さっぱりした気質のおかげでとてもリラックスして楽しかった。おでんの味は、関西味に知らず知らずに慣らされていた私には戸惑うものもあったけれど、この 店が発祥という餅の茶巾やロールキャベツはとてもおいしかった。そして三人でいろいろ食べて一人3000円行かなかった。
 今年で創業して104年目の東京を代表するおでん屋です。志ん生師匠もこの店に東京本来の匂いに納得して通っていたのでしょうか。

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