笑福亭福笑 瀧川鯉昇二人会
このおじさんたちには余計なことはいらないね。
開口一番 古今亭志ん坊 「不精床」
笑福亭福笑 「代書屋」
瀧川鯉昇 「二番煎じ」
中入り
瀧川鯉昇 「鰻屋」
笑福亭福笑 「釣道入門」
開口一番はなぜか古今亭から。カラテカの矢部に似たくりくり坊主な人だった。習った通りにやってるのはべつにそのとおりだけれど、間延びした喋り方を一生懸命やっているからどうもイントネーションが変。
続きまして久しぶりの福笑師匠。客の大半は師匠を知らないようで微妙な空気が漂うも、家のトイレでタバコを吸う時灰皿がないから股間の間から便器に灰を捨てていたら、・・・をやけどした話をして「こんなつかみはいかがでしょうか?」で強引に客を引き寄せた。(笑)
一席目は代書屋。師匠の代書屋は、「あくまで私のイメージですよ」と言いながらまず代書屋とはどんなイメージなのかということを細かに表現してから始まります。確かに、いまや代書屋といわれて頭に何か浮かぶ人のほうが少ない。狭い部屋に大きな年代ものの机を置いて、両脇には六法全書や暦や書類、硯等の文房具が雑然と、しかし一定の調和を保ちつつ置かれている・・・。蜘蛛が巣を張って獲物を待っているような商売だからどうしても陰気になって、自分は学問があるが客は読み書きも出来ないというのでどうしても優越意識を持ってしまう、そんなイメージ。
以上のイメージそのまんまの陰気で上目遣いな代書屋のところへ、アホで陽気な無筆な男がやってくるのだから、二人の間にはコミュニケーションは無理!(笑)男の無知な発言に耐えかねて、代書屋が客に分からないように声は出さないが口ぱくだけで「あほ」という様が可笑しい。しまいには、こんな汚い履歴書を出したって絶対受からないに決まってる!と、男が読めないのをいいことに書類に「この男を会社に入れれば必ず災いをなす」と勝手に書き足してしまった。(笑)
私が今まで知っていた代書屋は、あまりにアホな依頼者に翻弄される代書屋であり、アホの飛びぬけ具合を笑う話でしたが、福笑師匠の代書屋は、まさに代書屋が主役。アホな発言に愕然としたり困ったりイライラしたり逆切れしたりする代書屋の様を表現した一席でした。これは、普段人を上から目線で見ているインテリ層を笑う噺ということになるでしょう。
調べてみると、落語の台詞そのものは福笑師匠と他の演者と変わってないのです。(災いをなすはオリジナルだけど)それなのにどこに力点を置いて語るかによって落語の印象はぜんぜん変わってしまう。古典を再構築してオリジナルに仕上げている福笑師匠はただの変なおじさんではないのですなあ。素晴らしい。
次は関東の変なおじさん、鯉昇師匠。今日はどんな可笑しい話をしてくれるのかと思ったら、この後福笑兄さんとの打上げがあるから体力を温存しなければと(笑)すぐに「二番煎じ」を開始。まくらをふらなかった代わりに落語はたっぷり演じてくれて、こちらもたっぷり笑いました。落友様も言っていましたが、あの顔は卑怯なほどこの噺にぴったり。年恰好も町内を回っている旦那衆と合っているうえに、しし鍋をつつく表情の出し方が絶妙。猫舌の男が熱い肉を口に放り込んだときの驚いた顔などは鯉昇師匠でなければ表現できない可笑しさ。いい大人の大人気げなさの滑稽さかげんが師匠の真骨頂なのでしょう。あの顔は落語でこそ生かされるのであって、天職ですな。
中入りをはさんで又鯉昇師匠。次は脱力系のまくらが聴けました。いたって普通のことを話すような表情で言う事はシュールだから、ックックックックと腹筋に苦しい笑いが後を引く。これは書いてもぜんぜん面白さが伝わらないのが悔しい。
落語はごく軽く「鰻屋」を。鰻が入った桶の蓋に赤い×が書いてあるのでなんだろうと思ったら、それは赤十字マークで、病気の鰻が入っている(笑)その中にぶるぶるしびれている鰻がいてそれは「脳溢血」(笑)。二階に寝てる親父が同じ症状だったからだって(笑。サゲは、鰻を捕まえた主人がニュルニュル逃げる鰻を掴みながら「どうぞごゆっくり~!」と鰻屋に来た客に声をかけて高座から引っ込んじゃった(笑)疝気の虫と同じ形のオチでした。
トリは福笑師匠で。鯉昇師匠がやけにあっさり下りちゃったなーと思ったら、時間がえらく押していたんだそうで、気を利かせて鰻に付いていった訳ですね。
イルカは賢いから殺したらあかんと言うんやったら、アホやったら殺してもええんかという楽しい話から、落語は福笑師匠自作の新作。釣の名人と初心者が一緒に山の中で山女釣りに来たが、なぜか初心者ばかり釣れて名人はちっとも釣れない。始めのうちは負け惜しみで「たとえ釣れなくても、自然と一体になる心持を楽しむのが釣り道」と言っていたが、あまりに自分は釣れないは、初心者がいちいち癇に障る物言いをするもんだから終いにはブチ切れてしまう噺。これも代書屋同様、釣れないのでどんどんイライラしてきて行動が変になっていく様を笑う噺でした。トリに使うネタかどうかはちょっと??でしたがひたすら楽しかったです。
このような摩訶不思議な人材が大いに活躍できる落語って、本当に素晴らしいなーと思ったのでした。
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