先週、長年気になりつつ行かなかった「新宿十二社温泉」へ入って来ました。
新宿中央公園の真裏に位置し、ビルの地下に湧く真っ黒い温泉・・・・。こう書くとなんとダークなイメージ。昔はこの辺りには滝もあり、自然も多く風光明媚な気軽な観光地だったのにね。
午後二時、実際建物の前に立つと、昭和40年代に作ったときからそのまんまのような薄暗い入り口にダークなイメージがさらに増幅されてしまう。それなのに、値段は1900円ですよ。うーん。
施設内も全て建てたときからリニューアルはまったくしてませんというようなレベルで、友達を誘って行ける場所では決してない。浴室は、6人ほどが入れるめんつゆのように真っ黒な温泉で満たされた加温された風呂と(源泉は25度なの)、その風呂に沿うように細長い源泉風呂(冷たい!)があり、お湯の出がばらばらなカランが7個ばかり並んでいるつくり。窓はないし、お湯は真っ黒だし、なんとなくおんぼろだから落ち着かないだろうと思いきや、意外と落ち着く。まずお湯が良い。体を入れてみると実に当たりが柔らか。42度から43度ぐらいで心持熱めだけれどするっと入れるし、腕を摩ってみるとちょうどよくヌルすべで、肌がしっとりしそうなのがうれしい。首まで入ってしばらくすると良い具合に頭の先まで温まってきて温浴効果もけっこうありそうだ。こんな実力のあるお湯が新宿にあるとはありがたい、1900円でも又来ようかなと思ってしまった。
そしてもう一つここの良いところは、常連であるおばちゃんたちがさばけいるところ。新参者の私が入っていてもぜんぜん気にせず明るくおしゃべりしているから私も居心地がいい。まあ、私はただおとなしく入っているだけだから気に留めないだけかとも思っていたが、私の後に尻から胸にかけて見事な龍と牡丹の彫り物が施された二十七、八三十でこぼこの人が入ってきた時も、まったく風呂場の空気が変わらなかったのが偉かった。確かに、彫り物自体が悪さをするわけではないのだから、この状態のほうが正常なんだなーと、おばちゃんたちのおおらかな態度にますます嬉しくなった。従業員のおばちゃんも、「近頃は若い女の子がおしゃれでやることが多いらしいわよ」とあっさりしたもん。
それでも、お洒落というには広範囲にしっかり彫られていて、しかも当人はまったく荒れた感じがない普通の女性なので、おばちゃんたちは実は興味しんしんだったらしく、我慢できないとばかりに色々質問攻めにしていたのが可笑しかった。その質問に答えている女性も楽しげでいつの間にかすっかり打ち解けていた。その会話の中で一人のおばちゃんが「でも、あなた本当に綺麗よ」と言った。この台詞が本当に心から賞賛した言葉だったので、関係ない私がちょっと感激してしまった。ここの温泉の懐の広さ、存在意義を感じた瞬間だった。
心も体もすっかりいい感じになって風呂から上がって、大広間で一休み。最初に見たときは陰気な座敷だと思ったのに、風呂から出たときは心の隠れ家にいるみたいで妙に落ち着いている自分がいた。お湯の温浴効果が長く効き体はゆるゆる、おばちゃんたちの気質で心も軽くなったからだろうか。
都会のど真ん中にあるのに、田舎の感じの良い湯治場に来たような心持ちになれるところだった。
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