立川談春独演会 12月 横浜にぎわい座
にぎわい座では今年最後の談春独演会へ行ってきました。
立川こはる 「手紙無筆」
立川談春 1時間に及ぶまくらから 「一分茶番」
仲入り
立川談春 「夢金」
まずはこはるちゃんがせかせかと手紙無筆を。覚えたものをただ吐き出している段階でした。市馬師匠に習ったんじゃないかという気がした。
まずは「あれ(こはるちゃん)は着物を着てるから落語家って分かるけど、そうでなかったら高架下の靴磨きですね(笑)。」と、東京キッドみたいな古いたとえをつぶやき、今年一年ありがとうございましたというご挨拶から、どんどん長い話になって、とうとう一時間もフリートーク。(笑)その口調、リズム、語彙がまさに「赤めだか」の呼吸なので、聴いている方は引き込まれざるをえない。「で、どしたい?」と八五郎の話を聴いている大家の心持で聴いてしまいました。赤めだかは、この卓越した話術を完璧に紙面に再現できたところが凄いのだなあ。
沢山話があったので箇条書きで書きます。
@今年一番がんばった落語家は自慢じゃないが自分じゃないかと思ったら、月亭可朝と金髪豚野郎にもっていかれた。
@今かさになって攻めなきゃいけない時にいるのは自分と喬太郎だと思うのだけれど、二人ともどちらかという攻めるより守っていたい、中央は昇太やたい平にいてもらって自分達はどっか端っこのほうにいたいタイプ。
@赤めだかが中村勘三郎を号泣させ、ぜひ談春の落語が見たいということでスケジュール調整をがんばった結果、やっと渋谷のセルリアンタワー内にある「レストランでもやった方が儲かる」能舞台でやる落語会に勘三郎丞が来た。しかしその日共演する噺家が林家正雀で、正雀師のやる演目が中村歌右衛門が主役の「男の花道」だったから、主催者も正雀も皆勘三郎は正雀を見に来たと思い込んでいて「俺を見に来たんだ」と談春師がいくら言っても誰も信じてくれなかった(笑)
その日「天罰が下ったんでしょうね」39度の熱が出てしまいその中で「紺屋高尾」をやったが、能舞台だから演者の横にも客席があって律儀な談春師は横の客に不自然なほど首を振っていたら、その視線の先にばっちり勘三郎がいてやりにくくて仕方がなかった。
@落語の後、勘三郎丞が平成中村座でやっている「法界坊」に招待された。満席だったところに「釣りの時に使う椅子」みたいな折り畳み椅子に座らされてみたけれどこれが素晴らしかった。他人がやった芸に衝撃を受けたこれが第一位、二位はヤン・リーピン、三位は浅田真央。浅田真央はただ出てきただけで周りの空気を変えてしまう。昔志ん朝師匠や談志師匠にそれを感じた気がする。あの子は「十六、八?でしょ?」(野ざらしかよ!)自分が落語家になったぐらいの歳で世界を相手にやっている。もう浅田真央なら何をやっても許す。「真央らーという言葉はあるんですか?私は浅田真央ファンクラブ南関東支部局長?になります。」(笑)
ここまで話して、「あ!今日何を話したかったか思い出した!」だって。(笑)今までの話は余談の余談だったらしい。(笑)この続きは又来月と終わらそうとするが、続きが聞きたそうな客にすばやく反応し「ここまで話したんだからいいよねぇ」と続きへ突入。
内容は、談春がまだ22.3歳の頃、「かつらの乗りが良さそうだったから」という理由だけでミュージカルのオーデションに出た話。師匠に買ってもらったモスグリーンのダブルのスーツを着て出かけた談春青年は、タップダンスだ歌だと、自分の世界ととまったく違うオーデションの様子にびっくり。しかしここでかまさなくていつかますんだとめいいっぱいブラフをかましたおかげで、他の応募者にはミュージカルの関係者だと勘違いされる。(笑)歌の課題では、皆が自分のキーに合わせて2度下げてとか3度上げてと言っていたので、ただブラフをかけたいだけで「4度上げてください」(笑)とかまして、レコードの早回しみたいな裏声で「メモリー」を歌い会場の爆笑をさらうことに成功。後は男らしく「タップダンスや踊りは、落語家の僕には出来るわけないので、これで帰ります。これが出来たら落語家なんかやってない」と審査員達に宣言して胸を張って帰った。
次の日、なんとミュージカル事務局から、「技術はあれなんですが、何かピカッと光るものを感じた」という理由で、何でもやる端役で出演する事になった。その「ミュージカル坂本竜馬」の主役は西条秀樹で、談春青年は秀樹に、ミュージカル好きな談志師匠に見てもらいたいから呼んでくれと頼まれる。こんなの(失礼!)見に来るはずないと思いつつ、一応頼んだら、やっぱり見に来なかった。
師匠が見にこなかったので打ち上げに行きづらく1時間半も遅れて打上げ会場に行くと、小汚いおじさんが奥で寝ていると報告をされ、見ると談志師匠が椅子に腰掛け寝ていた。「見に行こうと思ったんだがな、家を出たらおなかが痛くなっちゃってやっぱりやめた。」(笑)「どうしてこちらにいらっしゃったんですか?」「一応挨拶だけでもしようと思ってな、事務所に連絡したらこっちだって言うから、来た」それから談志師匠は談春が止めるのもきかずマイクを持ち「見に行こうと思ったんだけども、家を出たらおなかが痛くなっちゃって、かみさんに相談したら、そういうことなら行かないほうが良いということになってね、だから見てません。」(笑)「(談春に)ところで、お前なにやったの?」「坂本竜馬です。」「坂本竜馬?江戸っ子のする芝居じゃねぇな」って帰っちゃった。(笑)師匠のおかげでとてもその場にいられなくなって師匠と一緒に帰った談春青年だったのでした。(笑)
この話は談春の語り方が面白く爆笑エピソードなんだけれど、お客に談春が見せたかったものは談志の物まねだったんだろうね。今までになくそっくり。目の玉の微妙な揺れまでそっくり。まるで談志師匠が喋っているような緊張感が会場に走りました。(笑)そして、ちらっとしか出なかったけれど、「会いたかったんだよー!」と、談春の手を握り感動を伝える勘三郎のどうしようもなく爽やかな様子もものすごく似ていた。物まねが上手い芸人は売れるという持論を実践していました。
さて落語はというと、一席目は芝居つながり?の演目で、私は久々に見れてとてもよかった。談春師の権助はすこぶる面白い。今回は「芝居が出来るきゃーあ?」と名古屋弁気味で、番頭さんから貰った一分を返したり又貰ったりの繰り返しが馬鹿に笑えた。権助のキャラクターの可愛さとリズムの良さが抜群だったからだと思う。「ちょうちんぶら」はやっぱり名作だった。(笑)こんなに楽しい権助芝居はなかなか余人では見られません。
二席目は、まくらで談春師が語った、勘三郎丞の「法界坊」で舞った桜色の紙ふぶきの素晴らしさが効いていた「夢金」。それはスパイスとして効いていたけれど、談春師の本来の上手さが自然ににじみ出てすこぶる格好が良い高座になったと思う。この話は、雪が積もった静かな大川端が目の前に浮かんで来ないと面白くないのだが、談春師の肩に力を入れて声を絞った語りが雪の日の夜の寒さを思い起こさせ、抑制の効いた癖のある浪人と「むやみやたらに金がほしい」熊公の会話が、シーンと静ずまりかえった雪明りの向こうから聞こえてくるようだった。
見事に江戸の夜を見せてくれた談春師も素晴らしいが、この美しい世界を最初に世に示した談志家元の偉大さを改めて感じた一席でもありましたとさ。
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